すみだ水族館 SUMIDA AQUARIUM BY ORIX

コラム

「すみだペンギン相関図2026ができるまで」

  • 水族館の裏側

2018年から始まり、今ではすみだ水族館の代名詞とも言える「すみだペンギン相関図」。ペンギンたちにも人間と同じように個性があり、その関係性や物語は年々移り変わっていきます。
2026年で8年目を迎えるペンギン相関図ですが、ペンギンたちの関係性をただ伝えたいだけではありません。今回のコラムでは、その目的から制作過程まで、すみだペンギン相関図ができるまでの全てをお届けします!
(著者 展示飼育チーム 春日善萌希 )

■ペンギン相関図のはじまり

冒頭でもお伝えした通り、ペンギンたちにも人間と同じように個性があり、それぞれに物語があります。

そして日々の暮らしの中で関係性が変わっていたり、以前は一羽でいるのが心細かったけど最近は強くなったとか、怒りっぽかったけど丸くなったなど、性格が変化したりすることもあります。

そんなペンギンたちと日々過ごしている私たち飼育スタッフの会話は、仕事でもプライベートでも常にペンギンたちの情報で溢れています。例えば、

「スイカとさくらは別宅を見つけたよね」

「きりこときなこの関係が深まっている感じがする」

「あめとももはが一緒によく探検している!」などなど。

けれど、こうしたペンギンたちの物語は、私たち飼育スタッフの記憶の中にしか残されていないのです。

また、マゼランペンギンの平均寿命は約25年。

私たち飼育スタッフが生涯を共にできるとは限りませんし、シフト勤務のためずっとペンギンたちと一緒に過ごせるわけではないので、毎日の情報共有が欠かせません。

ペンギンの飼育日誌には、ゴハンはどれくらい食べたか、体重は何キロかなど日々の観察や検査、処置状況など、健康管理のために必要な情報が1羽ごとに記録されています。

日誌の情報に加えて、ペンギンたちの行動や個性も共有することで、そのペンギンに合わせたより良い健康管理の方法を見出すことができるのではないかと考えました。

そこで!先輩たちが思いついたアイデアがこちら。

ペンギンたちの履歴書です。

今でも原本が残っていて、「7年前のマロンはこんなペンギンだったんだ~」なんて読み返すこともあります。

このようなペンギンたちの“リアルな社会”を1枚にまとめたものが「すみだペンギン相関図」なのです!

■ペンギン相関図の制作目的

大きく分けて、お客さま向け宛と飼育スタッフ向け宛の2つの目的があります。

お客さまに一番に伝えたいことは「ペンギンにも社会や個性がある」ということ。ふと目に入った1羽のペンギン。

「ココアは1人時間が好きなんだ。私と似ている。」「アロエは若手から慕われている。見習いたい!」など、すみだ水族館のペンギンではなく、すみだ水族館のこの子!と1羽1羽に興味を持って欲しいと思っています。

さらに言えば、1羽1羽の熱烈なファンになり、私たちと一緒に成長を見守って欲しいのです!

そして、ペンギン相関図は私たち飼育スタッフにとってもとても重要な役割を担っているのです。

私たちが目指すのは、ペンギンたちの体だけでなく、心も見る飼育です。

ペンギンたちが日々安心して過ごせているか、好きな相手と一緒にいることができているか、落ち着いて休めているか。

そうした心の健康も含めて見ていきたいのです。

…と急に真面目モードになりましたが、ペンギンたちの性格や関係性を見える化したペンギン相関図は飼育においても超重要なヒントになるのです!

そのためにはまずそれぞれの個性や行動、群れの中での関係性をよく知ることが欠かせません。

例えば、「アジサイとたいこはすぐに浮気しがち」「リンゴとマカロンは犬猿の仲」という情報があります。

写真のようにペンギンたちは定期的に健康観察のためにバックヤードに移動することがありますが、その時にこれらの情報があると、アジサイとたいこ、リンゴとマカロンの同室は避けた方が良い。ということが分かります。

反対に「ラムネとゆずの夫婦はお互いがいないとソワソワする」という情報からは、2羽は常に一緒に行動できるように心掛ける必要があることが分かります。

これらの情報はペンギンたちがケガをしたりせず、リラックスした生活を送れるようなケアの一助となっているのです。

実際に私も、過去に作成されたペンギン相関図を何度も見返していて、当時のことを妄想しながらペアの移り変わりやその個体の特徴などを記憶しました。

そういったペンギン相関図が与えてくれるヒントが、しっかりと飼育業務に活かされているのです。

■ペンギン相関図の作り方

あのややこしさは簡単には作れないのは、見ての通りです(笑)。

たくさんの人とペンギンたちの力が合わさり、毎年完成させることができています。

段取りは大まかに以下の通りです。

①情報収集
②前年版ペンギン相関図への情報書き込み
③制作メンバーでの打ち合わせ

個人的に一番大変だと感じたのは①情報収集です。

ペンギン相関図が更新されるのは年に1回。

これが何を意味するか分かるでしょうか…。

皆さまも1年365日、日々目まぐるしく過ぎていく中でだれかとの出会いや別れ、心境や環境の変化。色々と情報過多ではないでしょうか。時に忘れ去られる出来事もあるかと思います。

そうです。単純計算で1年分のストーリー×58羽分を記憶する必要があるのです!!

そこで私たちは、ペンギンたちの新しい一面や関係性に気づいた瞬間に写真を撮ったり、みんなでそのエピソードをシェアしたり、メモして…。

毎日出勤できるわけではないので、それぞれがペンギンたちをよく観察し、もらった情報はすぐさま全員に報告!を意識しています。

そして、毎年相関図の作成が始まる頃にアンケート調査をして、飼育スタッフ全員の記憶を持ち寄るのです。

次に行われる作業は、②昨年のペンギン相関図への書き込みです。

この写真をご覧ください。

1年分のストーリー×58羽分を書き込んだ結果です!

飼育スタッフとペンギンたちの関係性はもちろんのこと、飼育スタッフ自身のエピソードも盛り込んでいます。

人との関わり合いがあるペンギン、ないペンギン。私たちがどのような想いで58羽と接しているかを伝えたいからです。

あとは、ペンギンだけでなく私たち飼育スタッフもお客さまとお近づきになりたい!なんて気持ちもありますので、興味を持っていただけたらぜひお声がけください(笑)

最後に、③制作メンバーでの打ち合わせです。

ペンギン相関図には飼育スタッフだけでなく、プロジェクトメンバーも携わっています。

当初から制作に関係している方々ばかりなので、この時間はすごく楽しいです。

「バジルはモテ期終了か~」

「え!ここ別れちゃったの!」

「ぽんず成長したわね」

なんて、家族や友達の話をするかのように事細か~くお伝えしていきます。

まるで井戸端会議です。どんどん膨らむエピソードをお話し、書き込み続けること3時間以上。やっとペンギン相関図を形にする準備が整うのです。

■ペンギン相関図への想いとこれから

ペンギンって人間っぽい。いや、人間がペンギンっぽいのかもしれません。

私自身、入社前はペンギン相関図のいちファンとして毎年更新を待っていました。

「ペンギンたちにこんな個性ってあるんだ。それに気づける飼育スタッフってすごい。」

そんな純粋な気持ちでただ楽しんでいたのです。

今では考え方はガラッと変わり、「ペンギンに個性があるのは当たり前でしょ。」とまで言い切れます。

ただ水族館を訪れて、いきものを見ているだけでは気づけないかもしれない一面。

マゼランペンギンとはどんな生態?それだけではなく、ペンギン相関図を通して、さらにもっと先の可愛いだけじゃない彼らの魅力を皆さまにも知って欲しいのです。

ペンギンたちを理解し、ペンギンたちに共感し、寄り添える。

そんなきっかけとなるペンギン相関図をこれからも残していき、何年先の飼育スタッフやお客さまにも繋がっていくようにしていきたいです。

■おまけ:すみだペンギン相関図2026のみどころ

個人的な推しエピソード3選!

①新メンバー加入



2025年に産まれてきてくれた、あられとつづみ。

はやくも他のペンギンたちとの関係性も多く見られています。

ぜひ2羽の性格の違いにも注目して欲しいです。

②恐るべし魔性の女、フジ


フェロモンダダ漏れなのか、一度出会った男は逃さないフジ…。

あの一途なローズまでもが翻弄されるというショックも合わせてお届けしたいです。恨まれるぞ~…。

③2023年生まれ同期組の結託



ぽんず、こうめ、あめ、ずんだの仲が深まっていてすごくかわいいのです!

ぽんずは少し離れたところから見守る姉御肌。

あめはずんだに誘われながら、2羽でなにやらいたずらをしていて、こうめは何やってるの~って様子を見に行く。

ぞれぞれの役割がありそうで素敵な同期4羽なんです。


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