コラム

2023.06.16

アオウミガメの赤ちゃん「かなめ」、すくすく育ってふるさと小笠原の海へ!

すみだ水族館は、2012 年の開業時より東京都小笠原村のアオウミガメ保全活動に参画しています。その活動の一環として、小笠原諸島で生まれた赤ちゃんを、外敵に襲われにくい大きさに成長するまで当館で約一年間大切に育て、故郷の海へ放流する活動を行っています。大きく成長することで標識をつけることができ、今後のウミガメたちの保全に役立つ情報を得られる可能性もあります。
そして昨年2022年にも、お預かりしていたアオウミガメ「かなめ」が、小笠原の海へと還っていきました。かなめがすみだ水族館へやってきて、海に還るまでのようすをレポートします!

アオウミガメをお預かりするプログラムに参加

2011年6月に世界自然遺産に登録された小笠原諸島は、国内最大のアオウミガメの産卵地であり、現地では保全活動が行われています。すみだ水族館では、その活動に賛同し、小笠原村が所有する小笠原海洋センターを運営する認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャーが主催する、ウミガメジョイントブリーディングプログラムに参加しています。小笠原諸島で生まれたアオウミガメの赤ちゃんをお預かりし、約1年間育てながら、お客さまにアオウミガメの赤ちゃんのかわいらしい姿や生態を伝え、約1年間育てた後に生まれ故郷の海へ還す活動を行っています。‌‌

かなめとの出会い

2021年10月、かなめはすみだ水族館へやってきました。2021年7月20日生まれの体はわずか10cm(甲羅の長さ)。手のひらよりも小さな体で、元気いっぱいに前脚をパタパタと動かしていました。‌

<1,000Km離れたすみだ水族館に、無事に到着!>



小笠原小学校の皆さんに考えていただき「かなめ」と命名!

小笠原村立小笠原小学校では、総合学習の一環で5年生が小笠原海洋センターにてアオウミガメについて学習します。そこで、すみだ水族館でお預かりするアオウミガメの赤ちゃんについても、小笠原諸島の自然やいきものについての関心につながるように、小笠原小学校の5年生の皆さまに、小笠原村らしい名前を考えていただくことに。たくさんいただいた名前の中から、小笠原諸島の父島にある「要岩(かなめいわ)」に由来して「かなめ」と命名しました。‌

<小笠原諸島父島、扇浦海岸から見えるかなめ岩(写真左上)。扇浦海岸はアオウミガメの産卵場所のひとつ>



約20倍!すくすく成長しました

来た時には160gだった体重も、約20倍の3200gに。甲羅の長さは、9.7cmから28.5cmまで大きくなりました! その成長していくようすはすみだ水族館公式Twitterで配信し、多くの皆さまに「大きくなったね!」「また会いに行くね!」などのたくさんのコメントをいただきました。‌

<出発前最後の体重測定。約20倍に!>



<館内に掲示していた、かなめの成長グラフ>



<すみだ水族館で見送られるかなめ。大きくなりました!>




そしてまた、ふるさと小笠原諸島の海へ!

2022年10月6日、大きく育ったかなめは、1年間のすみだ水族館での暮らしを終え、故郷である小笠原諸島へともどりました。来た時と同様に、おがさわら丸で24時間かけて故郷へ到着!まずは、小笠原海洋センターへ。翌日に海へ還るのに備えて、小笠原海洋センターのプールでゆっくりと過ごします。‌

<小笠原海洋センター>



<小笠原海洋センターのプールで泳ぐかなめ>



いよいよ海へ還るとき

10月7日、最後の体調チェック。元気なかなめと一緒に、いよいよ放流を行う小笠原海洋センター前の製氷海岸へと向かいます。かなめが砂浜をちゃんと歩けるか、広い海で泳いでいけるか。飼育スタッフは少し心配な気持ちを抱えながら、還っていく姿を海の中からも見守れるように、ウェットスーツに着替えます。‌

砂浜でそっと手を放すと、ぴたっと止まってしまったかなめ。飼育スタッフがすこしお尻を押してあげると、走り出すように波打ち際へ向かっていき、そのまま波を超え小笠原の海へ!追いかけて泳ぐ様子を記録しようとスタッフも海へ飛び込みますが、ぐんぐん進んでいくかなめに追いつけない・・!あっという間に姿は見えなくなりました。‌
「速すぎて全く追いつかなかった・・!」と嘆きながらも、たくましく泳いでいってくれて嬉しい気持ちでいっぱいの飼育スタッフ。この先もたくさん食べて、も大きく育って、広大な自然の中で元気で暮らすんだよ、かなめ!‌

<砂浜を歩き、海へ還っていくかなめ>



小笠原村立小笠原小学校の皆さんへ、無事に海へ送りとどけたことを報告!

無事にかなめが海に還っていった日、飼育スタッフは小笠原小学校へ。「かなめ」と名前を考えてくれた、6年生になった皆さまに、かなめが元気に海に還っていったこと、素敵な名前をつけてくださったことで、すみだ水族館で皆様に愛され見守られてすくすく育ったこと、かなめを通じて小笠原村のことも伝えられたことをご報告。すみだ水族館一同からの感謝の気持ちが書かれたメッセージシートもお渡ししました。‌

<小笠原村立小笠原小学校6年生の皆さん>



<メッセージを見る小笠原小学校の皆さん>



アオウミガメの赤ちゃんを通じて

絶滅危惧種に指定されているアオウミガメ。すみだ水族館では、アオウミガメの赤ちゃんの成長を通じて、世界自然遺産小笠原諸島の自然の魅力を知る機会となり、ウミガメだけでなく、わたしたちの身の周りの環境や生態系などへ関心を持っていただくきっかけになればと考えています。‌


<世界自然遺産 小笠原諸島>


<アオウミガメについて>‌
アオウミガメは、IUCN(国際自然保護連合)及び環境省により絶滅危惧種としてレッドリス トに登録されています。小さい頃は雑食性ですが、大きくなると主に海藻や海草を食べ、甲羅の 大きさが最大約100cm、体重約200kg まで成長します。 毎年春から夏にかけて浜辺で産卵し、約二か月後に孵化(ふか)します。一度に100 個以上の 卵を産みますが、一年以上生きられるものはごくわずかで、成熟するまでには約 40 年かかると 言われています。‌