コラム

2023.08.23

墨田区の小学校で「メダカ」をテーマに出前授業を行いました

墨田区とすみだ水族館は2022年に、環境問題や生物多様性に関する教育や保全活動、区の活性化などを目的とした連携協定を結び、様々な取り組みを一緒に進めています。その一つとして、地域の小学校に水族館スタッフが訪問し、いきものを通じて、いのちの大切さや環境保全について伝える出前授業があります。2023年度は、7月3日~7月12日の期間、墨田区内5校の小学校5年生に授業を実施しました。

今回の出前授業のテーマは「メダカ」

「メダカ」は広く認知されている身近ないきものですが、実は環境省レッドリストランク「絶滅危惧II類」とされ、全国的にその数が減っています。そもそもメダカとはどんないきものなのか、なぜ減少してしまっているのかなどを、飼育スタッフがクイズも出題しながら説明していきました。‌


授業をする飼育スタッフ

「どうしてメダカは少なくなっているでしょうか?」という問いかけに元気に答える児童のみなさん。「外来種がすみかを奪っているから」、「卵を産む水草が少なくなっているから」、「外来種がメダカを食べちゃうから」など、積極的な発言がありました。集まった回答は全部正解!事前に理科の授業で「メダカ」を学習していたこともあり、みなさん、しっかりと授業の理解をしている様子でした。‌


積極的に手をあげて授業に参加をする児童のみなさん

墨田区で見つかったメダカの話

2022年にすみだ水族館と墨田区が連携し、「メダカの学校プロジェクト」を行いました。「メダカの学校プロジェクト」とは、取り壊される旧校舎の池から保護したメダカを新校舎に移動させるというプロジェクトです。今回の出前授業では、同じ墨田区内で起こった身近な出来事として、児童・生徒やプロジェクトに関わったみなさんが学んだことを伝えました。‌

プロジェクトの説明の前に「墨田区でメダカを見たことがありますか?」という質問をしたところ、3,4人ほどの子どもたちが見たことがある場所を教えてくれました。「北十間川」「隅田公園の池」など、すみだ水族館の近隣もあがりましたが、実は、墨田区内にいるメダカは「カダヤシ」などのメダカに似た他のいきものである可能性が高いです。それにはみなさんも驚いたようすで、熱心にプロジェクトの話に耳を傾けてくれました。‌

プロジェクトで保護したメダカは、東京にはない地域由来の遺伝子が確認され遺伝的かく乱を起こさないためにも川に放流することができない状況でした。種の保存の観点からも一見価値のないメダカと判断されてしまいますが、野生のメダカの寿命は約1年。それにもかかわらず10年間、旧校舎の池でいのちがつながれてきました。本プロジェクトで、たくましく“いのち”をつないできたメダカたちを新しい環境に移動させるため、地域のみなさまや子どもたちが一丸となって取り組み、いのちや環境保全の大切さを考えるきっかけとなったことを、子どもたちにプロジェクトの内容とともに話しました。‌

話を聞いた子どもたちからは、「10年のあいだ、繁栄したことや、狭いところでも暮らせるメダカは本当にすごいと思う。」、「たくましさや命とはどんなものかを感じさせてくれた。昔から生きている生き物を未来につなげていきたいと思った。」など、いのちの尊さや地域のいきものを守りたいといった感想がありました。‌

[参考記事]‌
墨田区と連携、子どもたちにいのちの大切さを伝える「メダカの学校プロジェクト」

プロジェクトで保護したメダカたち(愛称:泳ぐ宝石 メダカのあずちゃん)は、墨田区の吾嬬立花中学校と中川小学校で飼育されていますが、なんと今回の出前授業先のひとつ、言問小学校でも元気に暮らしていました。異動された校長先生と一緒に、数匹お引越ししたそうです。プロジェクトを通じてさらにメダカの輪が広がっていました。‌


校長先生と一緒にお引越しした「泳ぐ宝石 メダカのあずちゃん」

いのちや自然環境を大切に

授業を受けた児童のみなさんからは、「外来種が水草を食べてしまっていることがびっくりした」、「自分たちが飼っているメダカが品種改良されているメダカだと初めて知った」、「責任をもっていきものを育てたい」など、様々な感想が集まりました。また、授業を受け「メダカ」と似ている外来種「カダヤシ」について調べてくれた方もいました。今回の出前授業が、いきもののいのちや自分たちの身の周りの自然、環境問題について、考えるきっかけになれば嬉しいです。‌

なお、すみだ水族館では、東京育ちのメダカ「東京めだか」を常時、飼育・展示しています。ぜひ見にいらしてくださいね。‌


すみだ水族館から一緒に出前授業に来た「東京めだか」を見る子どもたち

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